『かがみの孤城』 誰かの人生に寄り添う決意【朝どれアニメちょこっとコラム】

社会というものはどうにも「誰にとっても生きやすい」形にはならないらしい。誰かにとって生きやすい世の中は、一方で誰かにとっては窮屈で生きづらい世界になってしまう。人の多様性を認める以上、こればかりは仕方がない。
仕方がないからと言ってこの状況を傍観しているわけにもいかない。生きづらさを感じる人に手を差し伸べる、いわば“調整役”が必要だ。『かがみの孤城』はひとりの少女がその“調整役”を志すきっかけにあたる物語だった。

(大きなネタバレを含みます。)

本作の舞台となるのは鏡を通して自由に行き来することができる絶海の孤城。そこには問題を抱え、学校に行けずにいる7人の中学生が集められていた。そこで会合した7人は心を通わせ、各々に自信が抱える問題と向き合っていく。その過程で7人は違う時代から来た、同じ学校に通う生徒だということに気づくのだ。
その時7人は、自分達が抱えている問題が時代を超えても普遍的に存在するものだということに気付かされる。

この経験がひとりの少女の人生に大きな影響を与える。最も古い時代から孤城へと来ていたアキはここでの経験を経て、フリースクールの教師になることを決意するのだ。そして、未来で不登校となる後輩たちの“調整役”を買って出る。未来で孤城に集った生徒たちの学校生活を伴走していくこととなる。

他社の人生に伴奏するのは決して簡単なことではない。ひとりひとりが異なる個性を有しており、その方法論は千差万別だからだ。それでもアキ(喜多嶋晶子)が粘り強く子供たちと接することができたのは、自分と共に悩んだ子供たちを救いたいという確固たる意志があったからだろう。

劇場アニメ『かがみの孤城』

■原 作:辻村深月「かがみの孤城」(ポプラ社)
■配 給:松竹
■公 開: 2022年冬 全国公開
映画公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/kagaminokojo/
原作公式サイト:https://www.poplar.co.jp/pr/kagami/

 (C)2022「かがみの孤城」製作委員会

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