『神々の山嶺』 人はなぜ山に登るのだろうか?【朝どれアニメちょこっとコラム】

うちの父は無類の山好き。大学時代には山岳隊を組んで南米・アコンカグアに登頂したほど、登山には情熱を注いでいた。僕はあまり山に詳しくないので「海外の山に登るとか、すごい」ぐらいの解像度しか持ち合わせていないのだけれど……。

長らく疑問に思っていたことがある。人はなぜ山に登るのだろうか?
もちろん僕だって日帰り登山なら経験がある。その道程で感じる自然の雄大さや、山頂に到着した瞬間の達成感は大いに理解できる。ただ、うちの父をはじめとした“本気で山と向き合う人”の情熱にはそれ以上の何かを感じずにはいられない。彼らを突き動かしているのは何なのか? その答えの一端を『神々の山嶺』に見たように思うのだ。

エベレストへの頂上アタックの最中に亡くなった実在の登山家・ジョージ・マロリー。彼のエベレスト登攀の成否を追う深町誠は、有益な情報を失踪中の登山家・羽生丈二が握っていることを知る。羽生の行方を追う深町。彼はその過程で羽生がいかなる人生を歩み、失踪するに至ったかと向き合う。そして、彼が単身エベレストの最難関ルートに挑戦しようと準備していることを知るのだった。

深町が、マロリーが、登山に情熱を燃やす理由はどこにあるのだろうか? 山頂に到達した瞬間の達成感だろうか? 周囲からの賞賛だろうか? そんな簡単なもののためであれば、彼らは命をかけることはなかっただろう。彼らはただ、登山を通して自分自身と向き合っていた。本作はそれを僕に見せつけてくれたように思う。
父が本作を見たらどう感じるのだろうか。今度勧めて感想を聞いてみたいものだ。

『神々の山嶺』

【キャスト】
■日本語吹き替えキャスト
深町誠CV:堀内賢雄
羽生丈二CV:大塚明夫
岸文太郎CV:逢坂良太
岸涼子CV:今井麻美
■フランス語吹替キャスト
深町誠:ダミアン・ボワソー
羽生丈二(壮年期):エリク・エルソン・マカレル
羽生丈二(青年期):ラザール・エルソン・マカレル
岸文太郎:キリアン・レーリンガー
岸涼子:エリザベト・ヴェンチュラ

【スタッフ】
監督:パトリック・インバート
脚本:マガリ・プゾル、パトリック・インバート、ジャン= シャルル・オストレロ
音楽:アミン・ブハファ
美術監督:ダヴィッド・コカール=ダッソー、ミカエル・ロ ベール
編集:カミーユルヴィス・テリ、ベンジャミン・マソーブル
プロデューサー:ジャン=シャルル・オストレロ、ディディ エ・ブリュネール、ダミアン・ブリュネール、ステファン・ ローランツ
共同プロデューサー:ティボー・ルビー
製作:ジュリアン・フィルム、フォリヴァリ、メリュジーヌ ・プロダクション
共同製作:フランス 3 シネマ、オーヴェルニュ=ローヌ=ア ルプ・シネマ
原作:「神々の山嶺」作・夢枕獏 画・谷口ジロー(集英社刊)
吹替翻訳:光瀬憲子

公式サイト https://longride.jp/kamigami/
公式Twitter https://twitter.com/kamigami_movie

(c)Le Sommet des Dieux – 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Ciném

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