仕事の都合でアニメ『葬送のフリーレン』をマンガと照らし合わせながら読んでいる。思いのほか、これが新しい発見に満ちていて楽しい。
当たり前のことだけど、面白いマンガをトレースすれば面白いアニメができるというものではない。物語がマンガに忠実であったとしても、そこには演出があり、キャストの演技が加わる。アニメならではの見せ方が生まれるのだ。それに気付かされるたびにハッとさせられる。
この発見が特に強かったのが『葬送のフリーレン』第8話「葬送のフリーレン」ラストシーン、作中で初めて「葬送のフリーレン」という言葉が初登場する瞬間だ。窮地に追い込まれた魔族・リュグナーが過去を振り返り、過去に出会った魔法使いのことを思い出す。その俗称である「葬送のフリーレン」という名を口にする。
マンガ版では比較的サラッと語られるこの言葉。アニメではたっぷりとした演出が加えられ、印象的な一言となっていた。
リュグナーの回想開始から徐々に音楽が盛り上がっていき、それが最高潮に至った瞬間、低音が止む。その瞬間に合わせてリュグナー演じる諏訪部順一の声で「葬送のフリーレン」という言葉が呟かれる。画面が暗転し、サブタイトルである「葬送のフリーレン」という言葉が立ち現れそれを強く印象付ける。音と映像とセリフを組み合わせた印象的な瞬間となっていた。
マンガを映像にする、そこには多くの人の手が加わり、多くのノウハウが詰め込まれる。当たり前のことだけど、それを改めて噛み締められる瞬間がそこにはったと思う。非常に味わい深かった。
TVアニメ『葬送のフリーレン』
■STAFF:
原作:山田鐘人・アベツカサ(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成:鈴木智尋
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
コンセプトアート:吉岡誠子
魔物デザイン:原科大樹
アクションディレクター:岩澤亨
美術監督:高木佐和子
美術設定:杉山晋史
色彩設計:大野春恵
3DCGディレクター:廣住茂徳
撮影監督:伏原あかね
編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二
音楽:Evan Call
アニメーション制作:マッドハウス
■CAST:
フリーレン:種﨑敦美
ヒンメル:岡本信彦
ハイター:東地宏樹
アイゼン:上田燿司
アニメ公式HP:http://frieren-anime.jp
アニメ公式Twitter:http://twitter.com/Anime_Frieren/
(c)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会