NETFLIXでアニメ『PLUTO』の配信が始まった。「いやぁ、やっぱり面白いな」なんてことを思いながら着々と試聴を進め、今まさに物語もクライマックスに突入。もうすぐ見終わるといったタイミングだ。
ただ、実を言うと僕は過去に原作マンガを読むのを何度か挫折している。もともと浦沢直樹作品が好きで、連載作はほぼ読んでいるのだけれど……。なぜか『PLUTO』だけは読みはじめては途中でやめるを何度か繰り返していた。
今改めてアニメ『PLUTO』を見ながら思う。当時僕は、本作にどこか感情移入しきれなかったんだろうなと。
『PLUTO』が連載されていた当時、僕にとってロボットは身近な存在ではなかった。aiboこそ一般流通していたが、本物を見たことはなかった。携帯ショップでペッパーくんが接客してくれることもなかったし、猫型配膳ロボットに料理を運んでもらう経験もなかった。なので、ロボットが“死”に対して悲しいという感情があまりわいてこなかったのだ。
本作は世界最高水準のロボットであるモンブランの“死”から物語がはじまる。その後、立て続けにノース2号が“死”を迎え、主人公であるゲジヒトは悲しみを感じながらも操作に乗り出すこととなる。
モンブランとノース2号、2機は見るからにロボットといった形状。彼らの“死”は当時の僕にとって「冷蔵庫が壊れた」に近い感覚だった。そして、彼らの“死”を悲しむ人たちの気持ちがどこか飲み込み切れていなかったのではないだろうか。それが原作を読む際に僕を挫折させた要因となっていたのではなかろうか、と。
『PLUTO』の連載が終わって10年以上の月日が経過し、僕らの生活にロボットはかなり身近なものになった。ファミレスには猫型配膳ロボットが料理を運んでくるし、実家に帰ると(僕がビンゴ大会で当てた)ロボット掃除機がせっせと家の中のゴミを集めている。不思議なもので、ロボットが身近になるとロボットに対しても感情移入するようになる。モンブランやノース2号よりもさらに形状が無骨なロボット掃除機に対しても、不具合が発生するとなんだか心配になる。多分実家のロボット掃除機が“死”を迎えたら僕はそこそこ悲しむと思う。
今の僕はモンブラン、ノース2号の“死”を悲しむことができる。彼らを破壊したプルートゥに対して怒りを感じることもできる。だから、今こんなに熱中して本作を楽しめているんだと思うのだ。
Netflixシリーズ『PLUTO』
10月26日(木)独占配信
■STAFF:
原作:『PLUTO』浦沢直樹×手塚治虫 長崎尚志プロデュース監修/手塚眞 協力/手塚プロダクション(小学館ビッグコミックス刊)
エグゼクティブプロデューサー:丸山正雄、真木太郎、山野裕史
監督:河口俊夫
キャラクターデザイン:藤田しげる
クリエイティブアドバイザー:浦沢直樹
CGI演出・特殊撮影:宮田崇弘
撮影監督:佐藤光洋
音響監督:三間雅文
音楽:菅野祐悟
アニメーション制作:スタジオM2
制作プロデュース:ジェンコ
■CAST:
ゲジヒト:藤真秀
アトム:日笠陽子
ウラン:鈴木みのり
モンブラン:安元洋貴
ノース2号:山寺宏一
ブランド:木内秀信
ヘラクレス:小山力也
エプシロン:宮野真守
プルートゥ:関俊彦
お茶の水博士:古川登志夫
天馬博士:津田英三
ヘレナ:朴璐美
ダンカン:羽佐間道夫
アブラ―博士:山路和弘
ブラウ1589:田中秀幸
作品公式サイト:https://pluto-anime.com
Netflix作品ページ:www.netflix.com/pluto
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/pluto_anime_
公式FaceBook:https://www.facebook.com/pluto.anime.official
(c)浦沢直樹/長崎尚志/手塚プロダクション/「PLUTO」製作委員会