今やアニメと切っても切り離せない関係となったアニメソング。アニメ視聴にあたり、どのような主題歌が使われるのかを楽しみの一つとしているという人も多いのではないだろうか? 今回はそんなアニメソング……ではなく、このアニメソングと共に流れる映像・オープニングアニメーションに注目した特集記事をお届けしたいと思う。
これまで多くのアニメが制作されるのにあわせて、多くのオープニングアニメーションも制作されてきた。その変遷も非常に興味深いものとなっている。今回はそのオープニングアニメーションの中から1990年代後半から2000年代にフィーチャー、筆者が個人的に愛してやまないものをピックアップしてお届けしていこうと思う。
『ちびまる子ちゃん』「ハミングが聴こえる」(1996)
1995年から放送開始となった第二期アニメ『ちびまる子ちゃん』、その2代目オープニングテーマとして使用されたのがこの「ハミングがきこえる」だ。作詞を原作者・さくらももこ本人がつとめ、作曲をフリッパーズギター/Corneliusでも知られる小山田 圭吾が担当。歌唱を担当したのはカヒミ・カリィだ。
これまで「オープニングアニメーション=アニメの世界観を反映させた映像がつく」という固定概念を根底から覆してきたのが本映像だ。アニメ『ちびまる子ちゃん』が主人公・まる子の日常を描写している作品であるのに対し、「ハミングがきこえる」のオープニングアニメーションは非常にシュール。「ふしぎな夢の中で」から始まる歌詞にあわせて不可思議な世界に迷い込んだような映像がスタート、その後も非現実的な映像が連続する。
中でも印象的なのは鏡を使った演出の数々だ。一見起こりそうで、よく観察すると現実にはありえない映像の連続。アニメーションでないと実現できない“画”がそこにある。
『カウボーイビバップ』「Tank!」(1998)
監督・渡辺信一郎、音楽・菅野よう子が担当したアニメ『カウボーイビバップ』。録音技師にNEA Jazz Masterを授与された録音技師・Rudy Van Gelderを迎えて制作された本作、全編通してJAZZナンバーが使用されている。
主題歌・劇伴含めて多くの名曲が使用された本作、中でも一際異彩を放つのがオープニングテーマ「Tank!」だ。演奏を担当したのはシートベルツ、菅野よう子率いる本ユニットは佐野康夫(Dr)や渡辺等(Ba)、今堀恒雄(Gt)、本田雅人(Sax)、三沢またろう(Per)と名プレイヤーが名を連ねている。
楽曲もさることながら、それとあわさった映像も実に衝撃的だった。タイポグラフィから始まり、黒を基調にした画面構成の中、洗練された色数で描かれる本オープニング映像。登場人物たちのシルエットが次々に登場してアクションを見せると、そこに銃器や宇宙船といった本作に欠かせないモチーフが合わさる。そのスタイリッシュな表現は今見ても新鮮だ。
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『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』「rise」(2004)
神山健治監督による『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の続編として制作された『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』。本作においても音楽を菅野よう子が担当しており、オープニング主題歌「rise」も彼女による仕事だ。歌唱を担当したのは2015年に心不全で他界したOriga。ロシア語と英語が交互に登場する歌詞は聴くものの耳を惹きつけずにはいない。
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』オープニング主題歌「inner universe」は、当時にしては珍しい全編3DCGを使用して描かれたもの、その近未来感漂う映像にも驚かされた。しかし、それ以上に衝撃的だったのが『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』「rise」だ。
高層ビル街の俯瞰ショットから始まる本映像。続けてキャラクターひとりひとりの日常が描き出されたかと思うと、映像に合わせてスタッフクレジットがスライドする。相乗効果でそこに心地いいリズムが生まれるのだ。これまでただの文字情報でしかなかったスタッフクレジットを映像演出に活かすことができる、それを提示してくれたのが本映像だと思う。
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『N・H・Kにようこそ!』「パズル」(2006)
滝本竜彦による小説を元に、オリジナル要素を交えて制作されたマンガ『NHKにようこそ!』。そのアニメ化作品として、アニメと小説の両要素を交えて映像化したのがアニメ『N・H・Kにようこそ!』だ。本作のオープニングをつとめるのは、いわゆる渋谷系に大きな影響を受けた音楽ユニット・ROUND TABLE featuring Ninoによる「パズル」。
パステルカラーの幾何学模様に、手書き絵のようなスタッフクレジットが乗るところから始まる本映像。その後も映像の一部かのように描かれた色彩豊かなスタッフクレジットは実に印象的で、見るものの目を引きつけ続ける。その独特の色使いを明確に記憶しているという人も多いのではないだろうか。
しかし、本映像の真骨頂は一風変わったカットの割り方にあると思う。画面にうつった人物の服の柄が、次のカットの背景になるなど、随所で使われる映像転換の方法は実に実験的。アニメならではの表現も多く見られ、心に残るものとなっている。
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『RED GARDEN』「Jolly Jolly」(2006)
GONZO制作によって2006年に放送開始となったアニメ『RED GARDEN』。ある夜、突如として怪物と戦うことを余儀なくなされた4人の少女たちを描いたダークファンタージーとなっている。次々に現れる怪物との戦いの果てには“元の生活”が待っていることを提示された4人は、悩み葛藤しながらも戦いに赴く。
本作のオープニングを担当したのはジャズバンド・JiLL-Decoy association。ダークな作品世界と相対するようにハッピーなサウンドで構成され、日常を謳歌したような歌詞世界は、彼女たちが求める“元の生活”を表現しているようにも感じられる。
オープニング映像も楽曲同様に、明るく楽しげなものに仕上がっている。真っ白な画面からスタートする本映像、そこに次々に登場するのは日常を感じさせるモチーフたちだ。シルエットで描かれたモチーフの中では花々が咲き乱れ、蝶が飛び交う。スタイリッシュでハッピーな印象を受ける映像だが、どこか退廃的な雰囲気も感じさせる、絶妙なバランスで成り立った映像となっている。
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ライターから一言
アニメを見るにあたって、何度も繰り返しで見ることとなるアニメ映像。これまでなんとなく見てきた映像の中でも、振り返っていると強く印象に残っているものが皆さんの中にもあるのではないだろうか?
もしも思い入れ深い映像として思いつくものがあれば、下記URLに設置したアンケートで教えてもらえると幸いだ。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeBjbDJ3v3bgyOSji9lqU2HWJ1cMpr6WGLkIefn3G4pR30yHw/viewform?vc=0&c=0&w=1&flr=0