『薬屋のひとりごと』第9話「自殺か他殺か」 死があまりに身近な世界で【朝どれアニメちょこっとコラム】

娘が生まれると、改めて医療の発展に感謝を感じずにはいられない。この幼い命に危機が訪れた時、彼女を救ってくれる手立てはこれでもかとばかりに充実している。おかげで安心して子育てができます、ありがとうございます。
そんなことを考えながら『薬屋のひとりごと』を見ていると、この作品世界における医療技術の未発達さに気付かされる。

第1話「猫猫」に始まる帝の御子の連続死などそのいい例だろう。白粉の原料である石楠花に毒素が含まれることを知らず、これの使用によって次々に帝の御子の連続死してしまうこの事件。現代の僕らであれば石楠花に毒があることは知っており、この事件の真相に辿り着くことは容易だ。
だが、医療についての知見が発展していないこの『薬屋のひとりごと』の世界では、誰も白粉に毒性があることを疑わない。結果、猫猫が毒性を指摘するまで連続死は止まることがなかった。挙句には猫猫が白粉の毒性を指摘した後もこれを使用する者が出てしまうのだ。

病によって人が簡単に命を落とすこの世界、誰しもが「人はいつ死んでもおかしくない」という想いを心の片隅に置いているのだろう。その結果、若くして自身の死に様に対して想いを巡らせることがあっても不思議はない。
猫猫にとってもこれは同じだ。だからこそ彼女の口からは「死ぬならどんな毒にしようかと」なんて言葉が飛び出したのだろう。

10代にして自分の死に様について考える人間は稀だろう。それは現代の医療技術があってこそだと気付かされる。改めて感謝せねばな、と。

TVアニメ『薬屋のひとりごと』

■STAFF:
原作:日向夏(ヒーロー文庫/イマジカインフォス刊)
キャラクター原案:しのとうこ
監督・シリーズ構成:長沼 範裕
副監督:筆坂 明規
キャラクターデザイン:中谷 友紀子
色彩設計:相田 美里
美術監督:髙尾 克己
CGIディレクター:永井 有
撮影監督:石黒 瑠美
編集:今井 大介
音響監督:はた しょう二
音楽:神前 暁・Kevin Penkin・桶狭間 ありさ
アニメーション制作:TOHO animation STUDIO×OLM
製作:「薬屋のひとりごと」製作委員会

■CAST:
猫猫:悠木碧
壬氏:大塚剛央
高順:小西克幸
玉葉妃:種﨑敦美
梨花妃:石川由依
里樹妃:木野日菜
阿多妃:甲斐田裕子
梅梅:潘めぐみ
白鈴:小清水亜美
女華:七海ひろき
やり手婆:斉藤貴美子
羅門:家中宏
李白:赤羽根健治
小蘭:久野美咲
やぶ医者:かぬか光明
ナレーション:島本須美

TVアニメ公式サイト:kusuriyanohitorigoto.jp
TVアニメ公式X(旧Twitter):@kusuriya_PR
TVアニメ公式TikTok:@kusuriya_pr

(c)日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

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