『薬屋のひとりごと』 能ある鷹は爪を隠したい、でも評価もされたい【朝どれアニメちょこっとコラム】

「女が化粧でばけるのはなにもみにくさを美しく見せるためだけじゃないのよ、その反対のこともあるの」そう話していたのは『火の鳥 黎明編』に登場したウズメという女性だった。高天原族に国を滅ぼされた彼女は、自らの醜く自信を化粧することで自らの身を守っていた。
なんでそんなことを思い出したかと言えば、これと似たことをやっているキャラクターを見たからだ。それが『薬屋のひとりごと』の主人公・猫猫。

花街で育った彼女は、襲われることのないよう自らにシミやそばかすを化粧して醜女を装って生きてきた。この習慣は女官となった後も変わらない。毎朝自身の顔にシミやそばかすを化粧し続けている。
彼女の行動原理の中心にあるもの、それは合理性だ。こと面倒ごとに巻き込まれることを嫌う彼女は、見た目を地味に装い、文字の読み書きができることも隠して生きている。その方が余計な仕事を押し付けられることもないからだ。

それでも周囲は彼女のことを放っておかない。その行動の端々から高い能力を見出され、玉葉妃付きの侍女に抜擢されることとなる。
組織に属すると能力があることを隠した方が生きやすい。これは猫猫たちが仕える後宮も、我々が直面する日本の会社も変わらない。ノウハウがあることがバレると余計な仕事は増やされ、地位も給料も据え置きなんてことはよくある。これを避けるために会社では無能を装うというのはよく聞く話だ。

ただ、無能を装いつつも評価をされたいというのが人の常なのだろう。猫猫の出世する姿は現代風にアレンジされたシンデレラストーリーなのかもしれない。

TVアニメ『薬屋のひとりごと』

■STAFF:
原作:日向夏(ヒーロー文庫/イマジカインフォス刊)
キャラクター原案:しのとうこ
監督・シリーズ構成:長沼 範裕
副監督:筆坂 明規
キャラクターデザイン:中谷 友紀子
色彩設計:相田 美里
美術監督:髙尾 克己
CGIディレクター:永井 有
撮影監督:石黒 瑠美
編集:今井 大介
音響監督:はた しょう二
音楽:神前 暁・Kevin Penkin・桶狭間 ありさ
アニメーション制作:TOHO animation STUDIO×OLM
製作:「薬屋のひとりごと」製作委員会

■CAST:
猫猫:悠木碧
壬氏:大塚剛央
高順:小西克幸
玉葉妃:種﨑敦美
梨花妃:石川由依
里樹妃:木野日菜
阿多妃:甲斐田裕子
梅梅:潘めぐみ
白鈴:小清水亜美
女華:七海ひろき
やり手婆:斉藤貴美子
羅門:家中宏
李白:赤羽根健治
小蘭:久野美咲
やぶ医者:かぬか光明
ナレーション:島本須美

TVアニメ公式サイト:kusuriyanohitorigoto.jp
TVアニメ公式X(旧Twitter):@kusuriya_PR
TVアニメ公式TikTok:@kusuriya_pr

(c)日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

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