『葬送のフリーレン』第13話「同族嫌悪」 身近な人といえど価値観は違うから【朝どれアニメちょこっとコラム】

今の場所を飛び出して冒険をしたいという気持ちと、ひとつの場所に根を張って生きていきたいという気持ち。僕にはその両方がよくわかる。
今でこそ地元が気に入り、できることなら一生この地で過ごしたいと願う僕ではあるのだが、昔はとにかく冒険がしたくて仕方がなかった。高校・大学時代など長期休暇が訪れる度に遠方に向けて自転車を走らせていた。随分変わったな、僕も……。

「冒険に出たいという気持ち」と「地元に根を張りたい気持ち」、相反したふたつの考えの間に優劣はない。優劣がないからこそ、ザインと彼の兄は気持ちをすれ違わせてしまったように思う。
冒険者になることを夢見ながらも、ザインは地元から離れられずに生きていた。彼が冒険に出れない理由は、自信の兄にあった。聖都で働くことを誘われた際、ザインの兄は「あの子(ザイン)から故郷まで奪うことはできません」と断っていた。兄のこの決断に負い目を感じたザインは故郷を離れられずにいたのだ。

しかし、ザインの兄にとってこの決断は後ろ向きなものではなかった。彼にとって地元に根を張り、その地で職務を全うすることこそが生き甲斐だったのだ。
一方のザインはその決断を後ろ向きなものと捉えていた。価値観の違いからくる些細な行き違いが、ザインの心を長年に渡り縛り付けていたのだ。

人それぞれに持っている価値観は大きく違う。そうとは分かりつつ、知らず知らずに他人も自分と同じ価値観で生きていると勘違いしてしまいがちだ。そして、それが悲しい行き違いをうむこともある。こういった行き違いを避けるためにも時には身近な人と胸襟を開いて話をする必要があるのかもしれない。

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