現在配信中のアニメ『悪魔くん』、その物語の核には「親子のあり方」があったように思う。
本作の主人公・埋れ木一郎と、その父親・埋れ木真吾は血のつながった親子ではない。それでも真吾は一郎の父親らしく振る舞うための努力を惜しまない。彼が窮地に陥れば救いの手を差し伸べ、積極的にコミュニケーションを取るように自ら働きかける。そんな父親を訝しみながらも、一郎は徐々に真吾に対して心を開いていく。血がつながっていなくても親子の絆を築くことができる、それを身をもって体現して見せた作品だと思うのだ。
本作にはそんな埋れ木親子と対照的に、絆を壊す方向に向かう親子も登場した。その中でも印象的なのがエピソード9「父親」にて登場した風間みお / 風間弘樹親子だ。
映画の脚本家だった弘樹は、娘・みおの誕生前に「娘の魂にささげる傑作を書いている」と脚本執筆への情熱を燃やす。その情熱は次第に加速度を増し、弘樹は悪魔との取引にまで手を出す。そして、みおが生まれる直前に失踪してしまう。
そんな弘樹がみおたちの元へ姿をあらわすのだ本作エピソード9「父親」だ。本エピソードで埋れ木一郎は、弘樹と悪魔の間に交わされた契約の破棄に成功する。
僕自身、年末には娘が産まれてくる。なので、弘樹の気持ちが痛いほどによくわかる。娘が産まれてくる前にもっと立派な功績を残したいという焦りは僕の中にもある。あわよくば悪魔と契約したいとすら時々思うのだ。
しかし、それが娘にとって理想的な親の在り方ではないことは忘れてはいけない。
本作においてみおが望んだのは、父親が多大な功績を残すことではなかった。ただただすぐ近くに居続けてほしい、それが彼女の最大の希望だったのだ。しかし、弘樹はそんなことも解さずに自分の中にある親としての理想像を追い続ける。みおたちの前に姿をあらわしたの後にも、自分には“親になる資格”がないと再び姿をくらましてしまう。
しかし、彼のいう“親になる資格”は本人のエゴでしかない。自分が持っている勝手な親の理想像に娘を付き合わせているだけなのだ。親の独りよがりに子供を付き合わせてはいけない、親になるにあたって心がけないといけないと思った。
アニメ『悪魔くん』
■原作 水木しげる
■キャスト
悪魔くん/埋れ木一郎:梶裕貴
メフィスト3世・メフィスト2世:古川登志夫
風間さなえ:白石涼子
風間み:花守ゆみり
グレモリー:ファイルーズあい
朝凪ヒナ:藤井ゆきよ
埋れ木エツ子:柳沢三千代
サタン:屋良有作
ストロファイア:下野紘
初代悪魔くん/埋れ木真吾:三田ゆう子
■スタッフ
総監督:佐藤順一
キャラクター原案・シリーズディレクター:追崎史敏
シリーズ構成:大野木寛
キャラクターデザイン・総作画監督:渋谷秀
美術監督:空閑由美子
色彩設計:辻田邦夫
撮影監督:荻原猛夫
魔法陣デザイン:越阪部ワタル
音楽:井筒昭雄
アニメーション制作:エンカレッジフィルムズ
製作:東映アニメーション
■配信情報 2023年11月9日(木)よりNetflixにて世界独占配信
■関連サイト・SNS
『悪魔くん』公式Twitter:https://twitter.com/Anime_Akumakun
『悪魔くん』公式サイト:https://www.toei-anim.co.jp/akumakun/
ゲゲゲの鬼太郎&悪魔くん アニメポータルサイト:https://www.toei-anim.co.jp/kitaro-akumakun/
鬼太郎&悪魔くん 応援部:https://c-rayon.com/result/kitaro-akumakun
(C)水木プロ・東映アニメーション