『葬送のフリーレン』第10話「強い魔法使い」 魔族、それは人間と相入れない存在【アニメミニコラム】

どうやら人というのは自分の身近な存在に感情移入してしまうらしい、なんてことを先日『PLUTO』を見ながら感じていた。僕は本作を見ながら、自分でも驚くほどに本作に登場するロボットたちに感情移入していた。
(『PLUTO』のネタバレを挟みます)
中でも自分で驚いたのは、ロビタへの感情移入っぷりだ。見た目もいかにもロボットという風貌であり、初出の際はスクラップ場で捨て置かれていたロビタ。もちろんのこと当初は彼に対して感情移入するということはなかった。しかし、ロビタがゲジヒトとヘレナの養子となり、成長していく姿を見ていくうちに情が芽生えていった。その成長過程がまるで人間の子供そのもののようで、気づけば彼のことを愛おしく思っていた。結果、ロビタの“死”に対して涙を流さずにはいられなくなった。

『葬送のフリーレン』における魔族の描写は、徹底して感情移入をさせないようになっていると感じる。
彼らはあくまで人間とは異なる価値観を持って生きている存在だ。見た目こそ人間的で、人間と同じ言語を話す。それでも持っている価値観も倫理観も人間のそれとは大きく異なる。両者の間にある断絶を丁寧に描写することで、魔族を人間とは違う生き物だと説明する。決して感情移入させないように描いているのだ。

昨夜放送された「強い魔法使い」では、これまで数話にわたって暗躍してきた“断頭台のアウラ”とフリーレンの戦いが描かれた。その勝負はあまりに一方的なフリーレンの勝利で、本来であればアウラには同情すら覚えただろう。しかし、アウラを可哀想だと思う気持ちは不思議と湧いてこなかった。あくまで彼女は人間とは相入れない存在である魔族の一員だった。そのおかげで、フリーレンの強さがただただ際立ったのだと思うのだ。

TVアニメ『葬送のフリーレン』

■STAFF:
原作:山田鐘人・アベツカサ(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成:鈴木智尋
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
コンセプトアート:吉岡誠子
魔物デザイン:原科大樹
アクションディレクター:岩澤亨
美術監督:高木佐和子
美術設定:杉山晋史
色彩設計:大野春恵
3DCGディレクター:廣住茂徳
撮影監督:伏原あかね
編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二
音楽:Evan Call
アニメーション制作:マッドハウス
■CAST:
フリーレン:種﨑敦美
ヒンメル:岡本信彦
ハイター:東地宏樹
アイゼン:上田燿司

アニメ公式HP:http://frieren-anime.jp
アニメ公式Twitter:http://twitter.com/Anime_Frieren/

(c)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

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