自分の身体は自分の意志で完全にコントロールできる……のであればそんなに楽な話はない。残念ながら現実はそんなに甘くないようだ。ちょっとした気持ちの変化が身体を動きに大きな影響を与え、時には身体を上手くコントロールできなくする。精密な動作が求められるスポーツの現場において、この気持ちの変化は結果に直結する大きなファクターとなる。
それを初めて教えてくれたのは『あしたのジョー』だった。本作の主人公・矢吹ジョーは、ある事件をきっかけにテンプルへのパンチが打てなくなってしまう。そのきっかけとなったのは、盟友・力石徹との死だった。死の直前にジョーと対決する力石。彼はジョーの放ったテンプルへの一撃に大きなダメージを負い、試合後すぐに命を落としてしまう。これが原因となり、ジョーは無意識にテンプルへのパンチが打てなくなる。結果、ボクシング選手として引退直前まで追い込まれてしまう。
現在放送中の『忘却バッテリー』においても、心の変化が原因となり、身体のコントロールを失った選手が登場する。彼の名は藤堂葵。野球の名門校である私立帝徳高校からスカウトを受けるほどの実力を持つ葵だが、ある試合での送球ミスをきっかけにイップスを発症、一塁への送球時に思うように球を投げることができなくなる。これをきっかけに、これまで打ち込んできた野球を辞めてしまう。
長らく野球と距離をとってきた葵だったが、小手指高校野球部との出会いを機に再び野球と向き合う。選手として再起を目指して自身が持つイップスの克服に全力を燃やす。そして、小手指高校野球部の面々は彼のイップス克服に伴走していく。
改めて本作は心の物語だと気付かされる。
物語の中心に据えられた小手指高校野球部には、偶然にも高い実力を持つ選手が集結する。本来の彼らの実力は、名門である私立帝徳高校をもしのぐものだろう。しかしながら、彼らは私立帝徳高校に惨敗する。その大きな要因となるのは、各々の選手が抱える心の枷だ。
小手指高校野球部が進化を発揮するためには、ひとりひとりが自身と向き合い、心の枷を外していく必要がある。その葛藤が本作に大きなドラマを生んでくれるだろう。今後の放映も楽しみにしていきたい。
『忘却バッテリー』
<放送情報>
テレ東 4 月 9 日(火)深夜 24 時 00 分~
テレビ大阪 4 月 9 日(火)深夜 24 時 00 分~
テレビ愛知 4 月 9 日(火)深夜 24 時 00 分~
テレビせとうち 4 月 9 日(火)深夜 24 時 00 分~
テレビ北海道 4 月 9 日(火)深夜 24 時 00 分~
TVQ 九州放送 4 月 9 日(火)深夜 24 時 00 分~
AT-X 4 月 12 日(金)20 時 00 分~
リピート:毎週火曜 8 時 00 分/毎週木曜 14 時 00 分
※放送日時は予告なく変更になる場合がございます。
<CAST>
清峰葉流火…増田俊樹
要 圭…宮野真守
藤堂 葵…阿座上洋平
千早瞬平…島﨑信長
山田太郎…梶 裕貴
土屋和季…山谷祥生
国都英一郎…大塚剛央
巻田広伸…石井マーク
桐島秋斗…河西健吾
<STAFF>
原作:みかわ絵子(集英社「少年ジャンプ+」連載)
試合制作:高嶋栄充
監督:中園真登
シリーズ構成:横手美智子
副監督:飯田剛士
キャラクターデザイン:長谷川ひとみ
アクション作画監督:立中順平 / 徳丸昌大
美術監督:船隠雄貴
色彩設計:中野尚美
撮影監督:川下裕樹
3DCG 監督:小川耕平
編集:吉武将人
音楽:菊谷知樹 / 山崎寛子
音響監督:名倉 靖
音響効果:長谷川卓也
制作:MAPPA
オープニング・テーマ:Mrs. GREEN APPLE「ライラック」
エンディング・テーマ:マカロニえんぴつ「忘レナ唄」
(C)みかわ絵子/集英社・KADOKAWA・MAPPA